厚生労働省は、1月27日の中央社会保険医療協議会に調剤報酬の個別項目を提示した。
今回の改定で関心を集めているのは、新設項目の「かかりつけ薬剤師指導料」だろう。患者が選択したかかりつけ薬剤師が処方医と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握し、服薬指導などを行う取り組みを評価するもので、1人の患者につき1人の薬剤師のみ算定でき、患者にかかりつけ薬剤師になることの同意を得なければならない。
また、加算を算定する薬剤師の要件として、▽薬剤師として一定年数以上の薬局勤務経験▽同一薬局に週当たり一定時間以上勤務し、その薬局に一定年数以上在籍▽薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得▽医療に関わる地域活動に参画――なども設定。
点数や要件の詳細は、来週中にも明らかになり、患者の同意を得る方法などについても、今後、厚労省が留意事項通知などで示すだろう。
薬剤師個人を評価する加算は珍しい上に、加算の全貌が明らかになっていないことも影響しているのか、算定要件をめぐって、早くも「厳しい」などと不安の声が聞かれているようだ。
ただ、「処方医と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握」などは、「やっていて当然」の業務であり、かかりつけ薬剤師は、患者に選んでもらうことが前提になるので、同意を得ることは不可欠となる。
大学を卒業したての薬剤師や、現場から離れていた薬剤師が即座にかかりつけの機能が果たせるのかどうかは疑問が残るので、経験年数と研修の受講も必要となろう。
同じ薬局に一定年数以上在籍し、週に一定時間以上勤務するのは、店舗間の異動や複数店舗の兼務がしにくくなることを想定しているためで、今回の改定の基本方針が大型門前の報酬適正化である以上、受け入れるしかない。
そう考えると、加算の要件設定は、それほど正当性を欠くものではない。
そもそも加算の創設は、医薬分業に対する世間の風当たりが強まる中で、何ら有効な手立てを講じられないまま、厚労省に「患者のための薬局ビジョン」を策定されてしまったことに起因している。
しかもビジョンでは、「医薬分業の原点に立ち返り、現在の薬局を患者本位のかかりつけ薬局に再編する」などと言われてしまっている。これでは、「薬局はいままで何をしてきたのか」と言われても反論できない。
大手チェーン以外にもやるべきことをやってこなかった薬局はあったはずだ。にもかかわらず、昨年末に決定した診療報酬改定率では、大型門前薬局をバッシングの元凶に仕立て上げ、その報酬削減を生け贄として差し出し、何とか本体プラスに持ち込んだ。
加算の創設には、そうした背景があったことを肝に銘じてもらいたい。
いずれにせよ、加算の効果や算定状況は、今後の中医協で検証される。要件が厳しいからといって算定率や、患者、医療従事者の満足度が低かったりすれば、さらなる批判は免れない。薬局関係者には、かかりつけ薬剤師の普及・定着に覚悟をもって取り組んでもらいたい。